育休取得による「昇給なし」は違法か?
ここ最近、餃子の王将の1分単位での残業未払い事件問題など、いくつか労働法に関して面白い・・・興味深い・・・いや企業側としては恐ろしい記事が幾つか発表されました。新聞等でご覧になられた方も多いと思います。そのうちの一つが本件の大阪高裁による「育休取得を理由とする『昇給なし』は違法」の判決です。
これまで育休取得による賞与不支給などは裁判でも争われたケースがありましたが、おそらく昇給に関する裁判は初めてかと思います。内容は下記のとおりです。
育休を3か月取得した京都市内の病院に勤務する男性看護師が、『育休を3か月以上取得すると翌年度に昇給させない』という就業規則の規定を根拠に、昇給されず(職能給部分のみ)、あわせて昇格試験も受けさせてもらえなかったというものである。
ちなみに一審の京都地裁では「違法とは言えない」として昇給をしなかった部分については男性看護師の訴えを認めなかった(ただし昇格試験については違法と判断)。そして本件の二審の大阪高裁では、病院が「不就労が3か月以上になると、経験が積めず、能力向上を期待できない」と主張したものの、『慶弔や労災、組合活動などによる休みが計3か月に達しても、昇給の対象外になっていない点を挙げ、「育休だけ扱いが異なることに合理性がない。規則は育休を取った人に無視できない経済的不利益を与えるもので、公序に反する」』と判断しました。
以上の内容を確認すると、『育休取得者に昇給なし』ということが全ての場合において違法とまでは言えないようである。もし就業規則で前述の「慶弔・労災・組合活動その他」も含めて不就労3か月以上ならば昇給しないということであれば、適法となる可能性も残っているのではないかと考えられます。
今後のこの事件が最高裁にまで行くのかどうかはわかりませんが、現状でいけば、賃金規程の昇給を定めた部分に上記のような昇給条件を定めることも大いに有効ではないかと思われます。
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社会保険労務士・iWAMマスター・米国NLP協会認定 NLPトレーナー
赤木 隆之