選択肢が従業員の幸福感と内発的動機づけを高める!!!

9月3日の日経新聞に神戸大学数理経済学チームのある研究結果に関する記事が掲載されていました。それは約2万人にアンケートを送り、①所得・②学歴・③進学や就職などにいおける選択の自由を示す「自己決定」・④健康・⑤人間関係の5項目に関する質問などを行った結果、「自己決定」が健康や人間関係に次いで幸福感に影響を与えており、所得と比較すると約1.4倍強い影響があったとのことです。この結果について同チームは「自分が選択し、責任を持つことが、満足度や幸福感により影響するのではないか」と分析しているとのことでした。恥ずかしながら最近知ったのですが、こういった心理学で頻繁に扱われるテーマが経済学や理系の研究でもしばしば扱われているようです。

因みにこの「自己決定」と同じ(似た?)概念で「選択」の重要性について研究した有名な学者がいらっしゃいます。エドワード・L・デシという方です。同氏の有名な著書「人を伸ばす力」(1999、新曜社)において、この「選択」を与えるということが、その人の自律性を促し、また内発的動機づけ(*)を高めるということが述べられています。

以上をまとめると、人は選択できるという状況が自分自身の自律性を高め、そのことに幸福感を得るようになる。結果その選択できる状況(仕事など)に価値を見出し、内発的動機づけが高まるというイメージではないのでしょうか。残念ながら私は内発的動機づけの専門家ではないので、あくまでも私の個人的な考えです。

 

しかし、少なくとも選択権を従業員に与えるということは、彼らのモチベーションをあげることに少なからぬ影響があることは間違いなさそうです。そう考えると、たとえば労働時間を自由に選択できる「フレックスタイム制」や様々な働き方・職務内容を選択できる「多様な正社員制度」の導入などは従業員の内発的動機づけを高めることにつながる可能性があるのかもしれません。またデシ氏の言うように、「仕事の内容は選択させられなくても、仕事のやり方を選択させることは内容よりは容易」であるし、少なくとも「○○を今やりなさい」と言うよりも「○○を今日の午後か明日の午前中かでやってください」というささいな選択でさえも相手の内発的動機づけを高められる可能性があるようです。

 

ただし、だからと言って何でもかんでも自由に選択させるわけにはいきません。「6歳児が赤ちゃんの面倒をみたいと言っても、まだ聞き入れるべきではない」とデシ氏も述べているように、個人個人に合わせた、選択の幅、難度を上司が見極める力も当然必要になってくるのは言うまでもないでしょう。

 

活動自体に価値を見出し、行う過程。仕事であれば、その仕事すること自体が報酬であり、それに価値を見出し楽しむというような意味。それに対して外発的動機づけは、給料や他者からの称賛に価値を見出す動機づけのこと。

 


社会保険労務士・iWAMマスター・米国NLP協会認定 NLPトレーナー

赤木 隆之